3月1日にも、科学史の流れを大きく揺らした出来事があります。
核エネルギー、地球環境、そして分子医学へ――視野の広がりを感じられる三件を挙げます。
① 1954年3月1日
ビキニ環礁での水爆実験(キャッスル・ブラボー)
米国が実施した水素爆弾実験「キャッスル・ブラボー」は、
予想をはるかに超える出力で爆発しました。
この実験は、
熱核融合兵器の実用化 放射性降下物(フォールアウト)の広域拡散 国際的な核規制議論
を引き起こします。
科学的には核融合反応の制御理論を前進させましたが、
同時に環境と人類への影響が世界規模で認識される契機となりました。
エネルギーの極限が、倫理の極限をも問うた日でした。

② 1966年3月1日
金星探査機ベネラ3号、金星表面に到達
ソ連の探査機ベネラ3号は、
金星に到達した人類初の人工物となりました。
通信は着陸前に途絶えましたが、
この成功は惑星探査の新時代を開きます。
ここから、
惑星大気の研究 極端環境下の工学設計 比較惑星学
が本格化しました。
地球外の世界が、
神話ではなく物理的対象になった瞬間です。

③ 1974年3月1日
CFC(フロン)によるオゾン層破壊理論の発表
マリオ・モリーナとF・シャーウッド・ローランドは、
フロンガスが成層圏で分解され、
オゾン層を破壊する可能性を示しました。
当時はまだ理論段階でしたが、
のちのオゾンホール発見、
そしてモントリオール議定書へとつながります。
科学的予測が、
国際的政策決定を動かした代表例です。
ここで初めて、
人類活動が地球規模で大気化学を変え得ると明確に認識されました。

3月1日の三つを並べると、
核融合の極限エネルギー 惑星への到達 大気環境の保全
という対照的な方向が見えてきます。
科学は力を拡張します。
しかし同時に、その力をどのように制御するかという知恵も求められます。