かつて2月28日に起こった出来事

2月28日にも、科学の流れをそっと変えた出来事がいくつかあります。

粒子、生命、そして宇宙へ――視野の広がりを感じられる三件を挙げます。

① 1953年2月28日

ワトソンとクリック、DNA二重らせん構造の着想を固める

ケンブリッジのキャヴェンディッシュ研究所で、

ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックが

DNA二重らせん構造の模型を完成させたのがこの日とされています。

ロザリンド・フランクリンのX線回折データを基に、

塩基対(A-T、G-C)が向かい合うことで

自己複製の仕組みを説明できると気づいた瞬間でした。

ここで初めて、

遺伝情報の保存 情報の複製 変異と進化

が一つの構造で統一的に説明されました。

生命は「神秘」から、

情報構造として理解できる対象へと移り始めます。

② 1928年2月28日

C. V. ラマン、光の散乱現象(ラマン効果)を発見

インドの物理学者チャンドラセカール・ヴェンカタ・ラマンは、

物質に当たった光の一部が

波長を変えて散乱することを実験で示しました。

これが「ラマン効果」です。

この現象は、

分子構造の解析 物質同定 医学・材料科学への応用

へと発展し、

現在もラマン分光法として広く使われています。

見えない分子振動が、

光のわずかな変化として読める。

物質は「光で対話できる存在」になったのです。

③ 1942年2月28日

米国で原子爆弾開発計画(後のマンハッタン計画)が本格化

この頃、核分裂研究は軍事研究へと急速に組み込まれ、

国家規模のプロジェクトへと進んでいきました。

中性子の発見(1932年)からわずか10年。

基礎物理学は、

核エネルギー 兵器開発 国際政治

と深く結びつきます。

科学は純粋な知の営みであると同時に、

社会と倫理の問いを背負う力であることが

はっきりと示された時期でした。

2月28日の三つを並べると、

物質の内部(ラマン効果) 生命の設計図(DNA) エネルギーと国家(核研究)

という三方向に、

20世紀科学が大きく分岐していく様子が見えます。

科学は世界を明らかにします。

けれど同時に、

その力をどう用いるのかという問いも必ず生み出します。