12月8日に起こった、人文学(文学・思想・宗教・音楽・文化記憶など)に関わる主な出来事を10件まとめました。
1854年
教皇ピウス9世が使徒憲章 Ineffabilis Deus を公布し、「無原罪の御宿り」の教義を公式に“信仰箇条”として宣言
12月8日付でマリアの無原罪懐胎が教義として定義される。聖母論・原罪理解・教皇不可謬性の議論に直結し、近代カトリック神学と敬虔の大きな節目となった。
1865年
作曲家ジャン・シベリウス誕生(フィンランド・ハメーンリンナ)
12月8日生まれ。交響曲や《フィンランディア》などで知られ、ロシア支配下のフィンランドに「音楽によるナショナル・アイデンティティ」を与えた存在。音楽を通した民族意識と国民国家形成の好例として研究される。
1903年
思想家ハーバート・スペンサー死去(イギリス・ブライトン)
12月8日に死去。社会進化論・「適者生存」の語で知られる哲学者・社会学者。ダーウィン進化論を社会に適用した「社会ダーウィニズム」の代表として、近代自由主義・功利主義・帝国主義をめぐる議論で今も批判的検討の対象。

1915年
ジョン・マクレーの戦争詩「In Flanders Fields」が雑誌 Punch に初掲載
12月8日号の Punch に匿名で掲載され、第一次世界大戦を象徴する追悼詩として一気に世界的に知られるようになる。この詩をきっかけに、ポピー(ひなげし)が戦没者追悼のシンボルとして定着した。
1941年
アメリカ議会が日本に対する宣戦布告を可決し、米国が正式に第二次世界大戦へ参戦
真珠湾攻撃の翌日である12月8日、ルーズベルト大統領の「恥辱の日(Day of Infamy)」演説に続いて宣戦布告がなされる。軍事・政治史にとどまらず、映画・文学・記念碑など20世紀後半の記憶文化全体を形づくった転換点。
1965年
第2バチカン公会議がこの日で閉会(1962年10月11日〜1965年12月8日)
サン・ピエトロ大聖堂での閉会ミサとともに、パウロ6世が「思想家・科学者の世界」への有名なメッセージを発する。典礼刷新・エキュメニズム・宗教自由などを掲げたこの公会議は、20世紀後半の神学・宗教社会学・宗教間対話を決定的に変えた。
1980年
ジョン・レノン、ニューヨークの自宅前で射殺される
12月8日夜、ダコタ・ハウス前でファンのマーク・チャップマンに銃撃され死亡。ロック史・反戦運動・カウンターカルチャーの象徴的な人物の死として、音楽文化史・メディア研究・記憶研究における大きな事件となった。
1994年
ブラジルの作曲家アントニオ・カルロス・ジョビン死去(ニューヨーク)
12月8日に心臓発作で死去。《イパネマの娘》などで知られ、サンバとクールジャズを融合させたボサノヴァの「設計者」。ブラジル音楽を世界に広めた功績により、ポピュラー音楽研究・ポストコロニアルな音楽交流研究で重要な位置を占める。
1943年
ジム・モリソン誕生(アメリカ・フロリダ州メルボルン)
12月8日生まれ。ロックバンド「ドアーズ」のボーカルであり詩人。歌詞・朗読・ステージ・パフォーマンスを横断する表現で、1960〜70年代の反体制文化・カウンターカルチャーを象徴する存在となった。
1951年
作家ビル・ブライソン誕生(アメリカ・アイオワ州デモイン)
12月8日生まれ。ユーモラスな旅行記や一般向けサイエンス・言語本で知られるノンフィクション作家。専門知識をわかりやすく、しかも笑いとともに伝えるスタイルは、「読みやすい教養書」の代表例として読書文化・科学コミュニケーション研究でも注目される。
この日付ひとつを取っても、
カトリック神学の大きな折り返し点(無原罪の御宿り・ヴァチカンII閉会) 戦争と記憶をめぐる象徴(「In Flanders Fields」・米国参戦・レノン暗殺) 音楽による国民的/世界的アイデンティティの形成(シベリウス、ジョビン、モリソン) 「やわらかい教養書」としての読書文化(ブライソン)
など、いろんなレイヤーで「人文学的な節目」が重なっている日ですね。