かつて12月7日に起こった、人文学(文学・思想・芸術・文化遺産など)に関わる主な出来事を10件ピックアップしてみました。
紀元前43年
ローマの弁論家・哲学者マルクス・トゥッリウス・キケロ暗殺
演説術・政治思想・ストア哲学的倫理をラテン語で体系化した人物の死。共和政ローマの終焉と、知識人の運命を象徴する出来事。
1598年
バロック美術を代表する彫刻家・建築家ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ誕生(ナポリ)
サン・ピエトロ広場、聖テレジアの法悦などを手がけ、彫刻・建築・都市空間を総合した「バロック的身体性」を創り出した巨匠。
1873年
アメリカの小説家ウィラ・キャザー誕生(『O Pioneers!』『わがアンティア』など)
アメリカ中西部の開拓者社会、とくに移民女性の生活世界を描き、フロンティア経験を文学的神話へと昇華した20世紀アメリカ文学の柱。

1896年
中国近代文学の先駆的作家・郁達夫(Yu Dafu)誕生
自己告白的な心理描写とエロス/ナショナリズムのテーマで、1920年代の中国モダニズム文学・創造社の中心人物となる。

1909–1923年
20世紀の詩人たちが相次いで誕生:ニコラ・ヴァプツァロフ(1909、ブルガリア詩人)、タタムクル・アフリカ(1920、南ア詩人)、インティザール・フサイン(1923頃、ウルドゥー作家)
それぞれ共産主義抵抗運動・反アパルトヘイト・印パ分離と亡命体験など、20世紀の政治的トラウマを言葉に刻んだ作家たち。※フサインの生年・誕生日は資料間で異同あり。
1941年
日本軍による真珠湾攻撃(アメリカの対日参戦のきっかけ)
軍事史だけでなく、映画・文学・記憶文化を通して「12月7日」という日付そのものが象徴化される。のちの戦争映画や回想記の重要なモチーフ。
1965年
第2バチカン公会議文書『現代世界憲章(Gaudium et spes)』および『宗教の自由に関する宣言(Dignitatis humanae)』が公布される
教会と「現代世界」の対話、そして宗教自由の尊重を明確にした画期的文書。20世紀後半のキリスト教神学・人権思想・宗教間対話に決定的影響。
1987年
ユネスコ世界遺産委員会第11会期(パリ)で、ブラジリアや中国の長城・泰山・紫禁城・秦始皇帝陵・莫高窟などが世界遺産に正式登録
近現代都市(ブラジリア)と、帝国権力・宗教・芸術を象徴する東アジアの文化遺産群が同時期に「人類共通の遺産」として位置づけられた節目。
1990年
キューバ出身の作家レイナルド・アレナス死去(ニューヨーク亡命下で自死)
同性愛者で反体制知識人として弾圧を受けた経験を『夜になるまえに』などで告発。亡命文学・LGBT文学・ディアスポラ研究に今も重要。
1995年
アイルランドの詩人シェイマス・ヒーニーがストックホルムのスウェーデン学士院でノーベル文学賞記念講演「Crediting Poetry」を朗読(ノーベル週間の一環)
「暴力と分断の時代において、詩は魂の“船であり錨”である」と語り、詩の倫理的役割を鮮やかに擁護。20世紀末の詩と公共性を象徴するスピーチ。

ざっくりまとめると、12月7日は
キケロ暗殺やバロックの巨匠ベルニーニ誕生のように、古代・近世ヨーロッパの転換点が重なり、 キャザー・郁達夫・アレナス・ヒーニーらのような、「土地・亡命・暴力の記憶」を描く作家たちと深く結びつき、 さらにヴァチカン公会議文書や世界遺産登録を通じて、20世紀以降の「人権」「宗教自由」「世界文化遺産」という枠組みが整えられていった日、とも言えそうです。