かつて12月6日に起こった出来事

かつて12月6日に起こった、人文学(文学・哲学・思想・文化遺産など)に関わる主な出来事を10件まとめます。

1658年

バルタサル・グラシアン没(スペインのイエズス会士・思想家・文筆家)

バロック期スペイン「概念主義(conceptismo)」を代表する倫理書・箴言集の著者。近世ヨーロッパの知識人像・処世観を理解するうえで重要。

1882年

ヴィクトリア朝小説家アンソニー・トロロープ没(『バ―チェスター』シリーズなど)

架空の県バーセットシャーを舞台に、聖職者社会と地方政治を描いた写実小説で知られる。19世紀イギリス社会史を読むように味わえる作家。

1886年

アメリカの詩人ジョイス・キルマー誕生(詩「Trees」で知られる)

素朴で宗教的な自然詩で人気を得た詩人。第一次大戦で戦死したことも含め、20世紀初頭アメリカの信仰と愛国心のイメージを映す存在。

1919年

文学理論家ポール・ド・マン誕生(ベルギー出身、後に米国へ)

デリダと並ぶ「脱構築」批評の中心人物。テクストの意味の不安定性を強調し、戦後の文学理論・批評方法を大きく変えた。ナチ協力的記事の発覚をめぐる論争も、人文学における倫理とテクスト読解を考える重要なケース。

1933年

米連邦裁判所「United States v. One Book Called Ulysses」判決で、ジョイス『ユリシーズ』の輸入禁止が解除される

ウールジー判事が『ユリシーズ』を「猥褻ではない真剣な文学作品」と認めた画期的判決。モダニズム文学と表現の自由、検閲の基準を大きく転換した出来事。

1950年

作曲家・久石譲誕生(映画音楽、特にジブリ作品のスコアで世界的に知られる)

『風の谷のナウシカ』『となりのトトロ』などの音楽で、日本アニメ文化の世界的受容を決定づけた存在。ポピュラー文化とクラシック音楽の橋渡し役でもある。

1954年

シモーヌ・ド・ボーヴォワールが小説『レ・マンダラン』でゴンクール賞を受賞

戦後パリ知識人の葛藤を描いた作品で、実存主義・フェミニズム思想家としてのボーヴォワールの地位を決定づけた受賞。知識人の政治的責任を問う20世紀文学の代表的作品。

1961年

フランツ・ファノン没(精神科医・社会哲学者、『黒い皮膚・白い仮面』『地に呪われたる者』の著者)

植民地主義と人種差別を告発し、脱植民地化運動とポストコロニアル理論に決定的影響を与えた思想家の死。現代の「人間性」「暴力」「解放」を考える出発点の一つ。

1968年

ノルウェーの作家カール・オーヴェ・クナウスゴール誕生(自伝的小説『マイ・ストラグル』で知られる)

徹底的に自己の生活を素材化した長大な自伝的小説で、21世紀文学における「自己暴露」「私文学」の新たな位相を開いたと評価される。

2024年

ユネスコ無形文化遺産委員会が63件の新たな要素をリストに記載(第19回会期、12月6日の決定を含む)

世界各地の「技」「祭礼」「口承伝統」などが新たに登録され、地域文化の多様性と継承の重要性が国際的に再確認された。無形文化遺産という枠組みそのものが、21世紀人文学の大きなテーマ。

ざっくり言うと、この日は

植民地批判・脱構築・実存主義など、20世紀以降の人文学を形づくった理論家たちが生まれたり亡くなったりした日であり、 『ユリシーズ』裁判やボーヴォワールのゴンクール賞のように、「どこまでが文学であり得るか」「知識人はいかに生きるか」を巡る象徴的な出来事が重なり、 さらに現代ではユネスコ無形文化遺産の登録を通して、「世界各地の生活文化そのものを人類の遺産とみなす」という新しい人文学的視点が強化された日でもあります。