ポッピナ「フェリックス・カンタブラ」の一日
ローマの下町、石畳の狭い路地に面した小さなポッピナ「フェリックス・カンタブラ(幸せな居酒屋)」では、今日も賑やかな声が響いていた。
店主のガイウスが朝から仕込んだレンズ豆のスープの香りが漂う中、常連客のマルクスが慌てて飛び込んできた。
「Salve, ガイウス!今日もいつものを頼む」
「Bona fides(信用第一)だ、マルクス。だが今日は金貨を持ってきたか?」ガイウスは笑いながら問いかけた。
「Tempus fugit(時は流れる)、友よ。昨日の借りは今日返すさ」マルクスは苦笑いを浮かべた。
そこへ、隣の建物の監督をしている建築士フラウィウスが現れた。現場で汗まみれの作業着姿で、部下たちを引き連れている。
「In vino veritas!今日の仕事は終わりだ。みんなでワインを飲もう!」
ガイウスは手を叩いて喜んだ。「Carpe diem!今こそ稼ぎ時だ」
店内はたちまち活気づいた。石工のルシウスはサイコロ賭博に夢中になり、「Alea iacta est(賽は投げられた)!」と叫びながらサイコロを振った。
一方、隅のテーブルでは哲学かぶれの若い書記官セネカが、酔いが回った商人に向かって語りかけていた。
「Memento mori(死を忘れるな)、友よ。人生は短いのだから」
「そんな堅い話はやめろ!Veni, vidi, vici(来た、見た、勝った)だ。今夜は勝利を祝おうじゃないか!」商人は大笑いした。
そんな中、店の片隅で静かにパンを齧っていた老人が突然立ち上がった。
「Panem et circenses(パンと見世物)ばかりでは人は満足しない。本当に大切なのは友情だ」
店内が一瞬静まり返ったが、すぐにガイウスが手を叩いた。
「Veritas vos liberabit(真実が君たちを自由にする)!老人の言葉は真実だ。みんな、今夜は友情に乾杯しよう!」
こうして小さなポッピナの夜は、per aspera ad astra(困難を乗り越えて星へ)という希望とともに、笑い声に包まれて更けていった。翌朝、みんなは二日酔いでmea culpa(私の罪です)と頭を抱えることになるのだが、それもまたローマの下町らしい一日の終わりだった。