エピグラムと古代ローマ CⅩⅠ

“Cur enim haruspex, augur, vates, hariolus non rideretur?”

この文章は、キケロ(Marcus Tullius Cicero)の『占いについて』(De Divinatione)第2巻第51章からの引用です。

文法的解釈:

  • Cur – 疑問副詞「なぜ」
  • enim – 接続詞「なぜなら」(説明を導く)
  • haruspex, augur, vates, hariolus – 主語(複数の占い師を表す名詞の羅列)
    • haruspex: 内臓占い師
    • augur: 鳥占い師
    • vates: 預言者
    • hariolus: 占い師
  • non – 否定副詞「〜ない」
  • rideretur – 動詞ridere(笑う)の接続法未完了受動態3人称単数形「笑われないだろうか」

翻訳: 「なぜなら、内臓占い師、鳥占い師、預言者、占い師が笑いものにされないということがあろうか?」

この文は修辞疑問文で、キケロが占いの非合理性を論じる文脈で、これらの占い師たちが当然笑いものにされるべきだという主張を表現しています。接続法が使われているのは、修辞疑問文における仮定的なニュアンスを表すためです。

申し訳ありませんが、先ほどお示しした文章は詩ではなく、キケロの哲学的散文作品『占いについて』からの引用です。詩の文化的背景についてではなく、この文章の文化的背景について説明させていただきます。

文化的背景:

時代背景: この作品は紀元前44年頃、共和政ローマ末期に書かれました。キケロが政治的混乱の中で哲学に専念していた時期の作品です。

宗教的背景: ローマでは国家宗教として様々な占いが公式に認められていました。この文章で挙げられている占い師たちは、すべてローマの宗教制度の一部でした。

  • Haruspex(内臓占い師): エトルリア起源で、犠牲動物の内臓を調べて神意を読み取る
  • Augur(鳥占い師): ローマ固有の制度で、鳥の飛び方や鳴き声から神意を判断する公的な祭司
  • Vates(預言者): より一般的な預言者、詩人的な側面も持つ
  • Hariolus(占い師): より庶民的な占い師

哲学的文脈: キケロはストア哲学やアカデメイア派の影響を受け、理性的思考を重視していました。この文章は、迷信的な占いに対する啓蒙的批判の一部として書かれており、ローマ社会の非合理的側面への知識人の批判を表しています。

政治的意味: 占いは政治的決定にも大きく影響していたため、キケロの批判には政治的含意もありました。