“Tu vero, quoniam semel es periura, puella, sedes in nostra cardine tota domus.”
この詩句について、正確な出典の特定が困難ですが、ローマ・エレギアの伝統に属する作品のようです。
文法的解釈と翻訳:
- Tu vero – 「まさにあなたは」(強調のvero)
- quoniam – 接続詞「〜なので、〜だから」
- semel – 副詞「一度」
- es – 現在2人称単数「である」
- periura – 形容詞主格女性単数「偽誓いを犯した、不実な」
- puella – 呼格「少女よ、恋人よ」
- sedes – 現在2人称単数「座る、住む」
- in – 前置詞「〜に」
- nostra – 所有代名詞奪格女性単数「私たちの」
- cardine – 奪格単数「扉の蝶番に」
- tota – 形容詞主格女性単数「全体の」
- domus – 主語、単数主格「家」
翻訳: 「まさにあなたは、一度不実を犯したのだから、恋人よ、 私たちの家全体が扉の蝶番に懸かっている。」
詩の解釈:
この詩句は恋人の裏切りとその結果を歌ったもので、非常に技巧的な表現を用いています。「cardine」(蝶番)の比喩は、恋人の行動によって家全体(おそらく詩人の人生や関係性全体)が不安定になっていることを示しています。蝶番は扉の開閉を決定する重要な部分であり、恋人の一度の裏切りが全てを左右する状況を巧妙に表現しています。
文化的背景:
ローマ・エレギアの伝統 この種の恋愛詩は、プロペルティウス、ティブルス、オウィディウスらが確立したローマ・エレギア詩の伝統に属します。恋人の不実や裏切りは、この詩形の重要なテーマの一つでした。
periuria(偽誓い)の概念 ローマ社会では誓いや約束は神々の前で行われる神聖な行為でした。「periura」は単なる嘘つきではなく、神聖な誓いを破った者という深刻な意味を持ちます。恋愛詩においては、恋人同士の愛の誓いを破ることを指すことが多く、道徳的な重みがありました。
家(domus)の象徴性 ローマ社会において「domus」は単なる住居ではなく、家族、血統、社会的地位を含む総合的な概念でした。恋人の裏切りが「家全体」に影響するという表現は、個人的な恋愛関係が社会的アイデンティティにまで及ぼす影響を示しています。
修辞技法 「cardine」の比喩は、ローマ詩人が好んだ日常的な物からの巧妙な比喩の例です。これは後のバロック詩にも影響を与えた技法で、具体的で身近なイメージを通して抽象的な感情を表現する手法です。
社会的文脈 上流階級の男性が解放奴隷や遊女との恋愛関係において、相手の「不実」を嘆くというのは、当時の恋愛詩の典型的なパターンでした。これは実際の社会関係の複雑さを反映しており、法的妻以外の女性との関係の不安定さを物語っています。