
その小さな墓碑は、ローマ郊外の街道沿いに静かに佇んでいた。通りかかる人々は、そこに刻まれた短い詩句を読んで哀れみの目を注いだ。
墓碑を立てたのは、若き夫妻マルクスとクラウディアであった。夫妻にとって待望の子どもが誕生したのは、冬が終わり春の兆しが見え始めたある日のことだった。夫妻は幼子を抱きしめ、喜びに涙した。だが、その喜びは儚かった。
子は生まれてわずか数日で病に冒された。医者は力なく首を振り、運命に任せるしかないと言った。クラウディアは幼子を抱きしめ、小さな手を握り締めて何度も呼びかけた。「どうか生きて、私の声を聞いて……。」
しかし、運命の女神フォルトゥナは無慈悲だった。幼子は薄く目を開けて、かすかな光を見ただけで、そのままクラウディアの腕の中で息を引き取った。
悲しみの中で、夫妻はその短い命を記憶に刻むため、詩を墓碑に刻んだ。
「Quid mihi parva puer dulcesque revista parentes,
quid patriam, quid saeva deos Fortuna negasti?
Non mihi vita fuit: vix dum nascentia vidi
lumina, vix pueri matrem sensique vocantis.」
その詩句を刻んだ夜、クラウディアは夢を見た。光に満ちた空間で、彼女の赤子が穏やかな微笑みを浮かべている。赤子は優しく告げた。
「母さん、悲しまないで。私はあなたの声を聞いた。あなたの温もりを確かに感じた。短かったけれど、私にはそれだけで十分だった。」
目覚めたクラウディアは涙を流したが、それは悲しみだけでなく、子が残してくれた確かな温もりへの感謝だった。
以来、夫妻はその小さな墓碑に花を供え続け、通りかかる人々はその花を見て、この小さな命が確かに存在したことを知るのだった。