エピグラム特徴古代ローマ CⅣ

“Vivamus, mea Lesbia, atque amemus, rumoresque senum severiorum omnes unius aestimemus assis!”

この詩はカトゥルス(Catullus, c. 84-54 BCE)の第5番の詩の冒頭部分です。

文法的解釈と翻訳:

  • Vivamus – 接続法現在1人称複数(vivere「生きる」)「生きよう」
  • mea Lesbia – 呼格、「私のレスビア」(恋人への呼びかけ)
  • atque – 接続詞「そして」
  • amemus – 接続法現在1人称複数(amare「愛する」)「愛し合おう」
  • rumoresque – 「そして噂を」(rumor + -que)
  • senum severiorum – 属格複数「厳格な老人たちの」
  • omnes – 対格複数「すべてを」
  • unius – 属格単数「一つの」
  • aestimemus – 接続法現在1人称複数(aestimare「評価する」)「評価しよう」
  • assis – 属格単数「アス銅貨の」(最小額の貨幣)

翻訳: 「生きよう、私のレスビア、そして愛し合おう、 厳格な老人たちのあらゆる噂を 一アス銅貨の価値と見なそう!」

作者と詩の解釈:

カトゥルスは共和政末期ローマの抒情詩人で、この詩は恋人クロディア(詩中では「レスビア」と呼ばれる)に捧げられた愛の詩です。彼女は政治家クロディウスの妹で、知的で美しいが奔放な女性として知られていました。

この詩は「carpe diem」(今を楽しめ)の精神を体現しており、若い恋人たちに対して、保守的な社会の道徳的批判を無視して、情熱的に愛し合うことを勧めています。「一アス銅貨の価値」という表現は、老人たちの説教を全く価値のないものとして軽蔑する気持ちを表現しています。

この詩は人生の短さと愛の貴重さをテーマとし、社会的制約よりも個人的な幸福を優先する、ヘレニズム的な価値観を反映しています。

共和政末期ローマの文化的背景

政治的・社会的状況 この詩が書かれた紀元前1世紀中頃は、ローマ共和政の危機の時代でした。内乱が続き、ポンペイウス、カエサル、クラッススの第一回三頭政治が成立する時期です。伝統的な共和政の価値観が揺らぎ、個人主義的な傾向が強まっていました。

文学的革新 カトゥルスは「新詩人」(poetae novi)と呼ばれるグループの一員で、従来のローマ文学の枠を破る革新的な詩人でした。彼らはヘレニズム期のギリシャ詩、特にアレクサンドリア派の技巧的で個人的な詩風を取り入れ、個人の感情や恋愛体験を率直に表現しました。

恋愛詩の革命 従来のローマ文学では、恋愛は軽視されがちでしたが、カトゥルスは恋愛を詩の中心テーマに据えました。特に人妻への情熱的な恋愛を歌うことは、当時としては非常に大胆でした。

社会道徳への挑戦 「厳格な老人たち」は、伝統的なローマの道徳観(mos maiorum)の守護者を指します。共和政ローマでは、厳格さ、節制、公的義務への献身が美徳とされていました。カトゥルスはこうした価値観に対して、個人の幸福と情熱を対置したのです。

ヘレニズム文化の影響 ギリシャ文化の影響により、知的で洗練された恋愛観が上流階級に浸透していました。レスビアのような教養ある女性が文学サロンの中心となり、詩人たちと対等に交流する文化が生まれていました。

享楽主義の台頭 エピクロス哲学の影響もあり、「今を楽しむ」という思想が若い知識階層に広まっていました。これは伝統的なストア派の禁欲主義とは対照的な価値観でした。

この詩は、こうした文化的転換期において、個人の自由と愛の権利を主張する、時代精神を象徴する作品として理解されます。