AI寓話-マルティアリスのエプグラムから第二部『パンより詩を』

登場人物

  • マルスス:貧しい詩人。街頭で民に語りかける自由な精神の人。
  • リカニウス:成金。詩人を見下しつつ、その言葉に怯えている。
  • クラウディア:パン屋の娘。マルススの詩に心打たれた若者。
  • ユウヌス:下層市民。労働に疲れつつも詩に希望を見出す男。

Ⅰ. パン屋の朝、詩人の声

パンを焼く朝の広場。クラウディアは父の店の前で、炭のようにくすぶった目で客を迎えていた。そこへ聞こえてくる、マルススの詩の声。

Centum miselli et vitreo latrone clientes

Quis numerat? Paucos, Galla, fatere, vocas.

「百人の客がいるふりをしても、実のところ、呼んでいるのは少数さ。」

クラウディアは笑った。「それ、リカニウスのことね。」

その日のパンはよく売れた。

Ⅱ. 再び、リカニウス邸

リカニウスの館では、詩人の話題が再燃していた。客人たちは囁く。

「彼は『パンより詩を』と叫んだとか。」

「だがその詩が、民を集めるのだ。」

「君のパンは硬いが、彼の詩は柔らかい、とまで言われている。」

リカニウスは怒って叫んだ。

「詩で腹がふくれるか! 銀貨を持たぬ者に、誰が耳を傾けるか!」

奴隷キトゥスがぽつりと言った。

「ですが、旦那様……今日はパン屋にも詩人の名が書かれておりました。」

Ⅲ. 言葉の宴

その夜、マルススはまた広場に立った。

灯火の下、ユウヌスが子どもを肩にのせて聞いていた。

マルススは言った。

Formosae peccant: quid faciant rugae?

「美しき者でさえ過ちを犯す。では、皺(しわ)ある者に何ができよう。」

するとクラウディアが声をあげた。

「ならば、貧しき者も語っていいはず!」

人々が拍手し、銀貨が一枚、彼の足元に投げられた。

続いてパン、果実、ぶどう酒、そして花が置かれた。

Ⅳ. 詩人の館

次の朝。フォルムの片隅に小さな家ができていた。

「マルススの書斎」と書かれた木札がかかる。

贈られた果物とパンで、詩人は民の相談を聞き、詩を贈った。

Cena ministerio non eget tua, Caeciliane…

リカニウスはその様子を陰から見ていた。

詩人の足元に集まる人々の顔は、かつて彼の宴で見たものだった。

だがその顔は今、自由で、笑っていた。

終わりに

この続編は、「富なき者の誇り」が「偽りの富を凌駕する」という、マルティアリスの精神に倣った寓話です。