エピグラムと古代ローマ L

文法解釈

Homo:名詞 homo, hominis の主格単数。「人」(主語) totiens:副詞。「その回数だけ」「何度も」 moritur:deponent 動詞 morior, mori, mortuus sum の第三人称単数現在形受動態(実質能動)「死ぬ」 quotiens:接続副詞。「~するたびに」「同じ回数で」 amittit:動詞 amitto, amittere, amisi, amissus の第三人称単数現在形能動態「失う」 suos:代名詞 suus, sua, suum の対格複数形。「自分の者たち」「親しい人々」 

翻訳

「人は、自分の大切な人を失うたびに、何度でも死ぬのだ。」

作者と出典

この格言は、1世紀前半に活躍したシリア出身の戯作者パブリリウス・シルス(Publilius Syrus)が著した『Sententiae』(格言集)に収められており、通称 Maxims の第252番として伝わっています 

解説

パブリリウス・シルスは、短く鋭い一言で人間の本性や人生の真理を突く「Sententiae(格言集)」で知られます。この「Homo totiens moritur, quotiens amittit suos」は、愛する者を失う精神的苦痛がまるで肉体的な死を何度も味わうかのような深い悲嘆をもたらすことを巧みに表現しています。後世の文学や墓碑銘、エラスムスの『Adagia』などでも引用され、普遍的な真理として広く受け入れられてきました  。この格言は、友情や家族愛の重みを再認識させるとともに、失うことの持つ多重の「死」の意味を教えてくれます。

文法的背景

文化的背景:

古代ローマでは「死」は一度きりの出来事ではなく、名誉・家族・社会的つながりの喪失も“生の一部を失う”ことと捉えられていました。 特に**家族中心の価値観(familia)**においては、親や子、妻を失うことは個人の存在そのものを揺るがす大事件。 死者に対しては家の神(ラーリス)として祀る習慣もあり、喪失=魂の一部が切り取られる感覚が根付いていました。