Hanc tibi, Fronto pater, genetrix Flaccilla, puellam Oscula commendo deliciasque meas… Non ego legitimos solicitus coepi amores, Nec mea furtivis floruit apta Venus. Iura senex neget ut mundum Cato, tertius heres Imperat extincto: non tua capta toro est.
3.7Sonnetによる翻訳
マルティアリスのエピグラム「Hanc tibi, Fronto pater…」の文法的解釈と翻訳
文法的解釈
1-2行目: Hanc tibi, Fronto pater, genetrix Flaccilla, puellam / Oscula commendo deliciasque meas…
- Hanc… puellam: hanc(代名詞「この」女性単数対格)+ puellam(puella「少女」の対格)→「この少女を」(commendoの直接目的語)
- tibi: tu「あなた」の与格 →「あなたに」(commendoの間接目的語)
- Fronto pater, genetrix Flaccilla: 呼びかけの言葉(vocative)。「父フロント、母フラキッラよ」
- Oscula… deliciasque meas: oscula(osculum「口づけ、キス」の対格複数)+ que(接続詞「そして」)+ delicias(delicia「喜び、愛しい人」の対格複数)+ meas(meus「私の」女性複数対格)→「私のキスと喜びを」(puellam と同格)
- commendo: commendo「委ねる、託す」の1人称単数現在形 →「私は託します」
3-4行目: Non ego legitimos solicitus coepi amores, / Nec mea furtivis floruit apta Venus.
- Non ego: non(否定)+ ego(「私は」主格)
- legitimos… amores: legitimos(legitimus「合法の、正当な」男性複数対格)+ amores(amor「愛」の対格複数)→「正当な愛を」
- solicitus: solicitus「心配して、不安で」男性単数主格(egoを修飾)
- coepi: coepio「始める」の完了形1人称単数 →「私は始めた」
- Nec: 接続詞「そして~ない」
- mea… Venus: mea(「私の」女性単数主格)+ Venus(「愛、情熱、性愛」主格)→「私の愛は」
- furtivis: furtivus「隠れた、秘密の」男性/女性/中性複数奪格 →「隠れたもので」
- floruit: floreo「花開く、繁栄する」の完了形3人称単数 →「花開いた」
- apta: aptus「適した、結びついた」女性単数主格(Venusを修飾)→「結びついて」
5-6行目: Iura senex neget ut mundum Cato, tertius heres / Imperat extincto: non tua capta toro est.
- Iura: ius「法、権利」の対格複数 →「法を」(negetの目的語)
- senex: senex「老人」主格 →「老人は」(Catoの同格)
- neget: nego「否定する」の接続法現在3人称単数 →「否定するかもしれない」
- ut: 接続詞「~のように」
- mundum: mundus「世界、宇宙」の対格単数 →「世界を」
- Cato: 固有名詞「カトー」(古代ローマの厳格な政治家)主格
- tertius heres: tertius(「3番目の」男性単数主格)+ heres(「相続人」主格)→「3番目の相続人が」
- Imperat: impero「命令する」の直説法現在3人称単数 →「命令する」
- extincto: extinguo「消す、死なせる」の完了分詞男性単数与格/奪格 →「死んだ者に」
- non tua capta toro est: non(否定)+ tua(「あなたの」女性単数主格、puella を指す)+ capta(capio「捕らえる」の完了分詞女性単数主格)+ toro(torus「寝台、結婚」奪格)+ est(sum「である」の3人称単数)→「あなたの彼女は寝台で捕らえられたのではない」
翻訳
「この少女を、父フロントよ、母フラキッラよ、
私のキスと喜びをあなた方に託します。
私は不安に駆られて正式な愛を始めたのではなく、
私の愛は秘密の関係に結びついて花開いたのでもありません。
厳格なカトーが世の中の法を否定するように、
3番目の相続人が死者に命令するように:彼女はあなたの寝台で捕らえられたのではありません。」
文脈的解釈
このエピグラムでは、詩人が少女(おそらく奴隷や解放された人)を彼女の両親(または保護者)に託している場面が描かれています。詩人は自分の関係が正式で開かれたものであり、隠れた不適切なものではないことを強調しています。最後の2行は難解ですが、おそらく彼らの関係の純粋さを強調するために、厳格な道徳家カトーの態度と対比させています。「寝台で捕らえられていない」というのは、不適切な性的関係がなかったことを示唆していると思われます。
古代ローマの子育て
古代ローマの子育ては、社会階層や時代によって異なる側面がありましたが、家族(familia)を中心とした独特の構造と慣習を持っていました。
家族構造と父権
パテル・ファミリアス(Pater Familias)
- 家長である父親が絶対的な権限(patria potestas)を持ち、法的に家族全員の生死に関わる権利を有していた
- 子どもは父親の所有物とみなされ、理論上は売却や遺棄も可能だった(実際には後期には制限された)
- 子どもが成人しても、父親が生きている限り法的には父親の権限下にあった
出生と乳幼児期
出生儀式
- 新生児は地面に置かれ、父親がその子を抱き上げる(tollere liberum)ことで家族への受け入れを示した
- 男児は生後8日目、女児は生後9日目に名付け式(dies lustricus)が行われた
- この儀式で子どもは魔除けの護符(bulla)を首にかけられた(男児は成人するまで着用)
乳母と初期養育
- 裕福な家庭では乳母(nutrix)が授乳と基本的なケアを担当
- 中流・下層階級では母親が直接育児を行うことが一般的
- 乳母や奴隷は初期のしつけや言葉の教育にも大きな影響を与えた
教育
家庭教育(7歳まで)
- 初期教育は主に家庭内で行われ、基本的な道徳観や行動規範を教えられた
- 男児は父親に、女児は母親に従って日常生活の技能を学んだ
- 躾(disciplina)は厳格で、服従と自制を重視した
公教育(7歳以降)
- 男児は7歳頃から学校教育が始まり、読み書き、計算、文学、修辞学などを学んだ
- 女児は主に家事や織物、音楽などの家庭的技能を習得
- 裕福な家庭では家庭教師(paedagogus)を雇い、より高度な教育を提供
成長と社会化
社会的儀式
- 男児は14-16歳で成人式(toga virilis)を迎え、子ども用のトガ(toga praetexta)から大人用のトガ(toga pura)に着替えた
- 女児は12-14歳頃に結婚適齢期とみなされた
- 成人儀式は子どもから大人への移行を象徴する重要な社会的イベントだった
訓練と見習い
- 貴族階級の子弟は政治・軍事訓練を受け、公職への準備をした
- 職人や商人の子どもは父親や親方の下で見習いとして技術を学んだ
- 農家の子どもは早くから農作業に参加した
親子関係
情緒的絆
- 文学や墓碑には子どもへの深い愛情を示す記録が多く残されている
- 子どもの死を悼む墓碑や詩は、親の深い悲しみを表現している
- プリニウスやキケロなど、子どもへの愛情を書簡で表現した例も多い
訓育と期待
- 「ローマ的徳」(virtus)の教育が重視された
- 勇気、忠誠、敬虔さ、節度、堅忍不抜など
- 先祖(maiores)の模範に従うことが期待された
- 特に貴族階級では、家名や家の名誉を保つことが重視された
時代による変化
- 共和政から帝政への移行とともに、家父長制の厳格さは徐々に緩和
- 帝政期には子どもの権利を保護する法律が増え、父親の絶対的権限は制限された
- キリスト教の普及とともに、子育ての価値観にも変化がみられた
古代ローマの子育ては、現代の視点からは厳格に見えますが、同時に子どもを社会の重要な構成員として育てる体系的なシステムを持っていました。家族の名誉と連続性を重視しつつも、子どもへの愛情表現も豊かに残されています。
ここまでです。お付き合いくださり有り難うございました。