マルティアリスのエピグラムと古代ローマ ⅩⅩⅠ

In foro Martialis videt mirabile callem, Ubi venditor clamat et strepit undique vox. Piscis olens, fruges corruptae, assidue ligantur, Cum pretio magno, sed minore fide.

ChatGPT4oによる翻訳


この詩は風刺詩としてのスタイルで書かれ、古代ローマでの市場の様子を皮肉交じりに描写しています。以下に文法的解釈と翻訳を含めた解説を行います。

文法的解釈と翻訳

  • In foro: 「市場で」という意味で、「市場」を意味する名詞「forum」の奪格形です。
  • Martialis videt: 「マルティアリスは見る」という意味。「Martialis」は主格で動詞「videt」(「見る」)の主語です。
  • mirabile callem: 「驚くべき光景を」という意味。「mirabile」は形容詞で「素晴らしい」または「驚くべき」、「callem」は「光景」という意味の名詞の対格です。
  • Ubi venditor clamat et strepit undique vox: 「そこで売り手が叫び、あらゆるところで声が喧しい」という意味。
  • Ubi: 「そこで」を意味する関係詞。
  • venditor: 「売り手」、主格。
  • clamat: 動詞「叫ぶ」。
  • et: 接続詞「そして」。
  • strepit: 動詞「騒ぐ」または「喧しい」。
  • undique: 副詞で「四方八方で」または「あらゆるところで」。
  • vox: 「声」、主格。
  • Piscis olens, fruges corruptae, assidue ligantur: 「臭い魚や腐った果物が頻繁に束ねられる」という意味。
  • Piscis olens: 「臭い魚」、主格(「piscis」は「魚」、「olens」は「臭い」を意味する現在分詞)。
  • fruges corruptae: 「腐った果物」、主格(「fruges」は「果物」や「作物」、「corruptae」は「腐った」を意味する形容詞の女性複数形)。
  • assidue: 副詞で「頻繁に」。
  • ligantur: 受動態の動詞「束ねられる」。
  • Cum pretio magno, sed minore fide: 「高価だが、信頼は少ない」という意味。
  • Cum: 「〜とともに」という意味の前置詞ではなく、この文脈では条件を示す接続詞として読めます。
  • pretio magno: 「高い価値で」、奪格(「pretium」は「価値」、「magnus」は「高い」)。
  • sed: 接続詞「しかし」。
  • minore fide: 「少ない信頼で」、奪格(「fides」は「信頼」、「minor」は「より少ない」)。

翻訳

市場でマルティアリスは驚くべき光景を目にする。
そこで売り手が叫び、あらゆるところで声が騒がしい。
臭い魚や腐った果物が頻繁に束ねられている、
それは高価だが、信頼は少ない。

詩の解説

この詩は古代ローマの市場の賑やかな様子を皮肉的に描いています。市場での売買の喧騒と商売における不誠実さ、つまり商品は高価にもかかわらず品質が低い、という風刺が込められています。売り手の声や商品の品質のギャップは、マルティアリスがよく扱うテーマである都市生活の日常の矛盾を象徴しています。彼の詩は、当時のローマ社会を批判的な視点で捉えることによって、人々の滑稽な側面や社会の不条理を浮き彫りにしています。

古代ローマの市場


古代ローマの市場について説明させていただきます。

主な市場は「フォルム・ロマーヌム」(Forum Romanum)と呼ばれる広場で開かれていました。ここは単なる市場だけでなく、政治・宗教・社会生活の中心地でもありました。

市場の種類としては以下のようなものがありました:

  • マケッルム(Macellum) – 食料品を専門に扱う市場で、肉、魚、野菜、果物などが売られていました。円形や長方形の建物の中に店舗が並び、中央に中庭があるのが特徴でした。
  • フォルム・ホリトリウム(Forum Holitorium) – 野菜市場として知られ、新鮮な農作物が取引されていました。
  • フォルム・ボアリウム(Forum Boarium) – 家畜市場で、主に牛などの取引が行われました。

また、トラヤヌス帝の時代には「トラヤヌスの市場」が建設され、これは世界最古のショッピングセンターとも言われています。5階建ての複合施設で、約150もの店舗が入っていました。

これらの市場は、単なる商取引の場所だけでなく、情報交換や社交の場としても重要な役割を果たしていました。また、ローマ帝国の経済システムと都市生活を支える重要な基盤となっていました。


ここまでです。お付き合いくださり有り難うございました。