Carmina Paulus emit, recitat sua carmina Paulus. Nam quod emas, possis iure vocare tuum.
このラテン語の詩(エピグラマ)を文法的に解釈し、日本語訳をご説明します。
Claude3.5Sonnetによる翻訳
文法解析:
1行目:
- Carmina (複数形・対格) = 詩を
- Paulus (主格) = パウルスが
- emit (emere動詞の現在形) = 買う
- recitat (recitare動詞の現在形) = 朗読する
- sua (所有形容詞) = 自分の
- carmina (複数形・対格) = 詩を
2行目:
- Nam (接続詞) = なぜなら
- quod (関係代名詞中性単数対格) = 〜するものを
- emas (emere動詞の接続法現在) = あなたが買う
- possis (posse動詞の接続法現在) = あなたは〜できる
- iure (奪格) = 法的に、正当に
- vocare (不定詞) = 呼ぶ
- tuum (所有形容詞中性単数対格) = あなたの(もの)として
日本語訳: 「パウルスは詩を買い、(その)詩を自分のものとして朗読する。 なぜなら、あなたが買ったものは、正当に自分のものと呼べるからだ。」
このエピグラマは、他人の詩を買って自分の作品として発表する文学的な盗作を皮肉った風刺詩です。法的には購入したものは自分のものと主張できるという論理を、文学作品の創作者としての正当性にすり替える詭弁を批判的に描いています。
詩の売買
はい、古代ローマでは文学作品の売買や取引が行われていました。以下のような形態がありました:
- パトロン制度
- 裕福な後援者(パトロヌス)が詩人を経済的に支援
- 代表的な例として、マエケーナースがウェルギリウスやホラーティウスを支援
- 見返りに詩人は後援者を称える作品を作ることも
- 写本の商業的取引
- 書籍商(bibliopola)が写本を製作・販売
- ローマのArgiletumやVicus Tuscusなどの地域に書店が集中
- 奴隷の写字生を使って複製を作成
- 朗読会文化
- 公開朗読会(recitationes)で作品を発表
- これが作品の宣伝や販売促進にもつながった
- プリニウス小の手紙などに、朗読会の様子が描写されている
ご質問の文脈で言えば、このエピグラマは実際の商取引を風刺的に取り上げたものと考えられます。当時、他人の作品を購入して自分の作としてリサイクルするような文学的不正が実在していたことを示唆しています。
これは文学作品の「所有権」と「著作権」の概念の違いを浮き彫りにする興味深い例でもあります。現代の著作権の概念は存在しませんでしたが、文学的な正直さや創作の真正性については意識されていたことが分かります。
詩の価格と高価な作品
古代ローマの文学作品の具体的な価格を示す直接的な記録は限られていますが、以下のような状況が知られています:
- スタティウスの「テーバイス」
- 長編叙事詩で、12巻からなる大作
- パトロンから相当な報酬を得たとされる
- ただし具体的な金額は不明
- マルティアリスの場合
- 彼の詩集について、当時の書籍価格に言及している詩があります
- エピグラマ 1.66で、自身の詩集が5デナリウスで売られていたことを示唆
- ただしこれが高価だったのか安価だったのかの判断は難しい
- ウェルギリウスの「アエネーイス」
- アウグストゥス帝から莫大な報酬を得たと伝えられる
- 一説では1行につき10,000セステルティウスを受け取ったという記録も
- ただしこの金額については議論がある
重要な注意点:
- これらの情報の多くは断片的な記録や後世の伝承に基づいています
- 実際の価格は写本の質や装飾の有無によっても大きく変動
- また、パトロンからの報酬と一般市場での写本の価格は区別して考える必要があります
なお、上記の情報については、古代の価格に関する記録が断片的であり、解釈が分かれる部分もあるため、一部の詳細については不正確な可能性があることをお断りしておきます。
ここまでです。お付き合いくださり有り難うございました。