Nuper erat medicus, nunc est vespillo Diaulus: Quod vespillo facit, fecerat et medicus.
このマルティアリスの有名なエピグラムを文法的に解釈し、翻訳いたします。
文法解析:
- Nuper (副詞): 最近まで、つい先ほどまで
- erat (動詞 sum の未完了過去): であった
- medicus (主格): 医者
- nunc (副詞): 今は
- est (動詞 sum の現在): である
- vespillo (主格): 死体処理人
- Diaulus (主格): ディアウルス(人名)
- Quod (関係代名詞 中性単数主格): 〜することを
- vespillo (主格): 死体処理人が
- facit (動詞 facio の現在): する
- fecerat (動詞 facio の大過去): していた
- et (接続詞): また
- medicus (主格): 医者も
日本語訳: 「つい先ほどまで医者だったディアウルスは、今や死体処理人となった。 死体処理人が今やることは、医者もまたかつてしていたことなのだ。」
このエピグラムには皮肉な洒落が含まれています。医者として患者を死なせていた彼が、今度は死体処理人として死体を扱うという仕事に就いているという意味で、両者の「仕事」が実質的に同じだったという痛烈な風刺となっています。
古代ローマの葬送・埋葬の習慣
古代ローマの葬送・埋葬の習慣について主要な点を説明いたします:
死の直後の儀式
- 最期の口づけ(extremum osculum)を行い、死者の魂を受け取る
- 近親者が死者の名を呼び(conclamatio)、死を確認
- 死者を寝台に安置し、コインを口に入れる(カロンへの渡し賃)
- 専門の業者(pollinctor)が死体を洗い、香油を塗布
葬列(pompa funebris)
- 特に上流階級では、先祖の蝋面(imagines)を着けた役者たちが行列
- 笛吹きや泣き女(praeficae)も加わる
- 死者への賛辞(laudatio funebris)が広場で行われることも
埋葬方法
- 共和政期までは土葬が一般的
- 帝政期になると火葬が主流に(火葬場はローマ市外に設置)
- 貧民は共同墓地(puticuli)に埋葬
- 奴隷や極貧者の遺体処理を行うのが本エピグラムのvespillo
追悼と記念
- 死後9日目に供養の宴(cena novendialis)
- 定期的に墓前で供物を捧げる
- 2月には祖霊祭(Parentalia)を執り行う
法的規制
- 12表法で市内埋葬を禁止
- 葬儀の贅沢を制限する法も存在
- 夜間の火葬は防火の観点から規制
これらの儀式や規制は、古代ローマ人の死生観や公衆衛生への意識を反映しています。また、社会的地位による葬送の違いも顕著でした。
本エピグラムに登場するvespilloは、主に夜間に貧民の遺体処理を行う下級の職業でした。医者(medicus)から転職したことが皮肉として効果的なのは、当時の医療水準の低さと、両者が死体に関わる職業であることを示唆しているためです。
古代ローマの医学と医者
古代ローマの医学と医者について、重要な点を解説いたします:
医学の特徴
- ギリシャ医学を大きく継承(特にヒポクラテス医学)
- 四体液説(血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁)に基づく治療
- 解剖学的知識は比較的限定的(人体解剖は禁止)
- 軍医による外科治療の発展が特徴的
- 公衆衛生(水道、下水道、浴場)に優れた知見
医者の社会的地位
- 初期には主にギリシャ人奴隷や解放奴隷が医者
- 共和政末期から市民層の医者も増加
- 上流階級は一般に医師を軽蔑(手仕事という偏見)
- 皇帝専属医や軍医は比較的高い地位と報酬
医療制度
- 私的診療が基本だが、都市による公的医師の任命も
- 専門分化(内科、外科、眼科、歯科など)
- 医学教育は徒弟制が中心
- 資格制度はなく、いわゆる「やぶ医者」も多数
代表的な医学者・著作
- ケルスス『医学論』(百科全書の一部)
- ガレノス(解剖学、生理学の体系化)
- ディオスコリデス(薬用植物学の基礎)
治療法と薬物
- 瀉血、浣腸、投薬が主な治療法
- ワイン、オリーブ油、蜂蜜を基材とした薬剤
- 鉱物性・動物性の薬材も多用
- 手術(特に戦傷治療)も実施
このような状況から、本エピグラムの医者(medicus)から死体処理人(vespillo)への転職が風刺として効果的なのは、以下の理由によります:
- 当時の医療の不確実性と高い死亡率
- 医者の社会的地位の相対的な低さ
- 両職業とも「死」に関わる仕事という共通点
なお、この解説は主に一般的な状況を述べていますが、時代や地域によって様々な違いがあったことにも留意が必要です。
Claude3.5Sonnetによる説明でした。