Tantaene animis caelestibus irae?

『アエネーイス』の有名な修辞疑問文を分析しましょう。

“Tantaene animis caelestibus irae?”

文法的解釈:

  • Tantae: 主格複数女性「それほど大きな」
  • -ne: 疑問を表す小辞
  • animis: 与格/位格複数「魂に」「心に」
  • caelestibus: 形容詞・与格/位格複数「天上の」「神々の」
  • irae: 主格複数「怒り」

日本語訳:
「天上の魂(神々の心)にかくも大きな怒りがあるものなのか」

この一行は『アエネーイス』の中でも特に有名な詩句の一つです。修辞疑問文の形を取り、人間の運命を左右する神々の感情(特に怒り)の激しさへの驚きと嘆きを表現しています。

詩的効果:

  1. -ne による疑問形式は、単なる問いかけというよりも、話者の驚きや困惑を強調
  2. tantae(それほど大きな)という形容詞の使用は、神々の怒りの途方もない規模を強調
  3. animis caelestibus(天上の魂)という表現は、神々の本質を詩的に表現
  4. irae(怒り)を文末に置くことで、詩行の結びとして効果的な余韻を残している

この一行は、人間の運命が神々の気まぐれな感情に左右されるという古代ローマの世界観を端的に表現しています。