multum ille et terris iactatus et alto vi superum saevae memorem Iunonis ob iram;

『アエネーイス』1-③です。

この部分を文法的に詳しく分析していきます:

multum

  • 「大いに、たびたび」(副詞)
  • iactatusを修飾しています

ille

  • 「彼は」(指示代名詞主格)
  • 主語として機能し、アエネーアースを指しています

et…et…

  • 「~も…も」(相関接続詞)
  • terrisとaltoを並列的に結んでいます

terris…alto

  • terris: 「陸で」(女性複数奪格)
  • alto: 「深い海で」(中性単数奪格)
  • どちらも場所を表す奪格として使われています

iactatus

  • 「投げ出された、もてあそばれた」(完了受動分詞主格)
  • illeと一致しています

vi superum

  • vi: 「力によって」(女性単数奪格)
  • superum: 「神々の」(男性複数属格、縮約形)
  • 手段を表す奪格句です

saevae…Iunonis

  • saevae: 「残忍な」(女性単数属格)
  • Iunonis: 「ユーノーの」(女性単数属格)

memorem…iram

  • memorem: 「忘れがたい、執念深い」(女性単数対格)
  • iram: 「怒り」(女性単数対格)

ob

  • 「~のために」(前置詞)

文法的直訳: 「彼は大いに、陸においても海においても投げ出され続けた、神々の力によって、残忍なユーノーの忘れがたい怒りのために」

文脈を含めた意訳: 「彼は陸でも海でも散々に翻弄され続けた。それは上なる神々の力により、残忍なユーノーの消えることのない怒りのためであった」

この部分は、アエネーアースが直面した苦難の原因が、ユーノーの怒りにあることを明確に示しています。特にmemorem(忘れがたい)という形容詞は、ユーノーの怒りが一時的なものではなく、長く続く執念深いものであることを強調しています。

逐語訳:

「運命により追放された彼は、ラウィニウムの海岸に至った。彼は陸地でも海でも、神々の力によって大いに翻弄され、凶暴で執念深いユーノーの怒りのゆえに(苦しめられた)。」

意訳:

「運命に追われ流浪の身となった彼は、ラウィニウムの海岸へと辿り着いた。彼は陸と海で神々の力に翻弄され、執念深く恐ろしいユーノーの怒りに苦しめられながらも進んだ。」

この部分は、アイネイアスの苦難を象徴的に描写し、『アエネーイス』の壮大な冒険の序章を成しています。