このラテン語の格言について解説いたします。まず文法的な解釈を行い、その後、意味と文脈について説明します。
文法的解釈:
“Quidquid id est, timeo Danaos et dona ferentes.”
- “Quidquid” – 「何であれ」を意味する不定代名詞
- “id” – 指示代名詞「それ」
- “est” – 動詞 “esse”(である)の三人称単数現在形
- “timeo” – 動詞 “timere”(恐れる)の一人称単数現在形
- “Danaos” – 「ギリシャ人たち」を意味する名詞の対格複数形
- “et” – 接続詞「そして」
- “dona” – 「贈り物」を意味する名詞 “donum” の対格複数形
- “ferentes” – 動詞 “ferre”(運ぶ、もたらす)の現在分詞の対格複数形
全体の意味:
「それが何であれ、私はギリシャ人たちとその贈り物をもたらす者たちを恐れる」

解説:
この格言はウェルギリウスの叙事詩『アエネーイス』の中で、トロイアの神官ラオコーンが語った言葉です。トロイア戦争の文脈で使われており、ギリシャ軍が残していった巨大な木馬に対する警告として発せられました。
この表現には以下のような含意があります:
- 警戒心:表面上は友好的に見える行為や贈り物に対して警戒することの重要性を強調しています。
- 裏切りへの懸念:敵対していた相手からの突然の好意は、裏に隠された意図がある可能性を示唆しています。
- 先見の明:ラオコーンはこの警告を発することで、将来起こる悲劇を予見していました。
- 批判的思考:表面的な印象だけでなく、状況を深く分析することの重要性を示しています。
現代では、この格言は「贈与者の意図を疑え」や「敵対者からの予期せぬ好意には用心せよ」といった意味で使われることがあります。ビジネスや外交などの場面で、相手の真の意図を見極めることの重要性を強調する際に引用されることもあります。