“Virtus, Albine, est pretium persolvere verum quis in versamur, quis vivimus rebus, potesse”

この文もペルシウスの『サテュラエ』からの引用で、「真の価値を払うこと」という美徳(virtus)について述べています。文法的な解釈は以下の通りです。
- Virtus: 名詞、女性、単数、主格。「美徳」「卓越性」を意味する。この文の主語。
- Albine: 名詞、男性、単数、呼格。「アルビヌスよ」。この詩が献呈された人物への呼びかけ。
- est: 動詞、直説法、現在形、3人称、単数。英語の’is’に相当。
- pretium: 名詞、中性、単数、対格。「価値」「代価」を意味する。persolveveの目的語。
- persolvere: 動詞、不定詞、現在形、能動態。「払う」「果たす」という意味。
- verum: 形容詞、中性、単数、対格。「真の」「本当の」を意味し、pretiumを修飾している。
- quis: 関係代名詞、中性、複数、奪格。「〜の中で」を意味する。
- in: 前置詞、奪格支配。「〜の中に」を意味し、quisを強調している。
- versamur: 動詞、直説法、現在形、受動態、1人称、複数。「(私たちが)身を置いている」「関わっている」という意味。
- quis: 関係代名詞、中性、複数、奪格。「〜の中で」を意味する。
- vivimus: 動詞、直説法、現在形、能動態、1人称、複数。「(私たちが)生きている」という意味。
- rebus: 名詞、女性、複数、奪格。「物事」「事柄」を意味し、quisに呼応している。
- potesse: 動詞、不定詞、現在形、能動態。possum(できる)の変化形で、「〜できること」を意味する。
これらを合わせると、「アルビヌスよ、美徳とは、私たちが身を置き、生きているこれらの物事の中で、真の価値を払うことができることである」と訳せます。ペルシウスは、真の価値を認識し、それに応じた行動をとることが美徳であると説いています。この一節からも、ストア派の倫理観がペルシウスの思想の基盤にあったことが窺えます。
ペルシウス(Aulus Persius Flaccus, 34年 – 62年)は、ネロ帝の治世に活躍したローマの風刺詩人です。彼の生涯と作品について、以下のような点が特筆されます。
- 出自と教育:ペルシウスは、エトルリア地方の騎士階級の家系に生まれました。幼くして父を亡くし、母とともにローマに移りました。ローマでは、当時有名だった文法学者レンミウス・パラエモンやストア派哲学者アンナエウス・コルヌートゥスに学びました。特にコルヌートゥスからは、ストア派の倫理観や人生観の影響を強く受けたと考えられています。
- 作風と思想:ペルシウスの風刺詩は、ローマ社会の道徳的退廃を厳しく批判しています。彼の詩の特徴は、洗練された文体、難解な表現、格言的な言い回しなどです。これらを通して、人間の愚かさや虚栄心を鋭く風刺し、ストア派の理想とする倫理的な生き方を説いています。
- 作品と影響力:現存するペルシウスの作品は、『サテュラエ(Saturae、風刺詩集)』と呼ばれる6篇の詩です。この詩集は、ペルシウスの死後、友人のコルヌートゥスによって編集・出版されました。難解な文体にもかかわらず、その道徳的内容が高く評価され、古代から中世にかけて広く読まれました。キリスト教作家にも影響を与え、近世ではモンテーニュやドライデンなどが彼の詩に言及しています。
- 生涯:ペルシウスは28歳の若さで亡くなりましたが、その短い生涯で古代ローマ文学に大きな足跡を残しました。彼の死の直前に書かれたとされる第6歌は、自らの人生を振り返り、ストア派の理想に従って生きようと努めたことを示唆しています。
ペルシウスの風刺詩は、同時代のローマ社会や人間性を知る上で貴重な資料であるだけでなく、普遍的な道徳的メッセージを含んでいます。彼の作品は、ローマ文学史において、ホラティウスやユウェナリスとともに風刺詩の伝統を築いた重要な一角を占めていると言えるでしょう。