“O curas hominum! o quantum est in rebus inane!”を文法的に解説してみましょう。

この文は、ローマの詩人ペルシウスの風刺詩『サテュラエ(Saturae)』の冒頭の一節です。文法的に解釈すると以下のようになります。
- O:感嘆の間投詞(感嘆格)。「ああ」「おお」という意味。
- curas:名詞、女性、複数、対格。「気がかり」「心配事」を意味する。動詞curoの目的語。
- hominum:名詞、男性、複数、属格。「人間の」という意味で、curasを修飾している。homoの複数属格形。
- o:感嘆の間投詞(感嘆格)の繰り返し。感情の高まりを表現している。
- quantum:疑問代名詞、中性、単数、主格。「どれほど多くの」という意味。
- est:動詞、直説法、現在形、3人称、単数。英語の’is’に相当。
- in:前置詞、奪格支配。「〜の中に」という意味。
- rebus:名詞、女性、複数、奪格。「物事」「事柄」を意味し、inの目的語となっている。
- inane:形容詞、中性、単数、主格。「空虚な」「むなしい」という意味で、quantumを修飾している。
以上をまとめると、「ああ、人間の気がかりよ!ああ、物事の中にどれほど多くの空虚があることか!」と訳すことができます。人間の悩みや心配事の多くが実は空虚で意味のないものだと嘆いた表現と解釈できます。ペルシウスは古代ローマにおけるストア派の影響を受けており、この一節にもその思想が反映されていると言えるでしょう。
ペルシウス(Aulus Persius Flaccus, 34年 – 62年)は、ネロ帝の治世に活躍した古代ローマの風刺詩人です。
- 生涯:ペルシウスはエトルリア地方のボルテッラで裕福な騎士階級の家系に生まれました。幼くして父を亡くし、母と共にローマに移り住みました。ローマでは文法学者レンミウス・パラエモンやストア派哲学者アンナエウス・コルヌートゥスに師事し、教養を深めました。
- 作品:ペルシウスの作品は、全6篇からなる『サテュラエ(Saturae、風刺詩集)』のみが現存しています。これらの詩は、同時代の社会や人々の道徳的堕落を鋭く風刺したものです。特に、ストア派の影響を受けた道徳観に基づいて、人間の愚かさや虚栄心を戒めています。
- 文体:ペルシウスの詩は難解で、洗練された文体と格言的な表現を特徴としています。ギリシャ語の引用や比喩表現が多用され、読者に深い思索を促すような構成になっています。
- 影響:ペルシウスの作品は、同時代や後世の文学者に大きな影響を与えました。特に、キリスト教作家には道徳的な内容が好まれ、中世を通じて読み継がれました。また、近世になってからは、ドライデンやモンテーニュなどの作家が彼の詩に言及しています。
ペルシウスは、短い生涯にもかかわらず、ローマ文学史上重要な風刺詩人の一人と位置づけられています。彼の作品は、古代ローマ社会の風俗や価値観を知る上で貴重な資料となっているだけでなく、普遍的な人間性の考察としても高く評価されています。