ADA (Americans with Disabilities Actアメリカ障害者法)は、1990年7月26日に成立した、アメリカ合衆国における包括的な公民権法です。この法律は、障害を持つアメリカ人に対する差別を禁止し、雇用、公共サービス、公共交通機関、民間施設など、社会生活の様々な場面において、平等な機会とアクセスを保障することを目的としています。
ADA成立の背景には、1973年のリハビリテーション法第504条の制定がありました。この条項は、連邦政府の資金を受けるプログラムや活動において、障害を理由とする差別を禁止するものでしたが、その適用範囲は限定的でした。ADAは、この504条の理念をさらに発展させ、障害者差別の禁止をより広範な分野に拡大することを目指して制定されました。
ADAは、以下の5つの主要な分野において、障害者差別を禁止しています。
- 雇用: 従業員15人以上の民間企業に対して、求人、採用、解雇、昇進、賃金、福利厚生など、雇用に関するあらゆる局面において、障害を理由とする差別を禁止しています。また、企業に対して、障害者が職務を遂行するために必要な合理的配慮を提供する義務を課しています。
- 州・地方自治体によるサービス: 州や地方自治体が提供するサービス(公共交通機関、学校、裁判所、公園など)において、障害を理由とする差別を禁止しています。また、これらのサービスを障害者が利用できるようにするための合理的配慮を提供する義務を課しています。
- 公共宿泊施設: ホテル、レストラン、映画館、劇場、商店、博物館など、民間企業が運営する公共の場所において、障害を理由とする差別を禁止しています。また、これらの施設を障害者が利用できるようにするための合理的配慮を提供する義務を課しています。
- 交通機関: 公共交通機関(バス、鉄道、航空機など)に対して、障害を持つ乗客が安全かつ便利に利用できるようにするための設備やサービスを提供する義務を課しています。
- 電気通信: 電話会社に対して、聴覚障害者が電話を利用できるようにするためのリレーサービスを提供する義務を課しています。
ADAの成立は、障害を持つアメリカ人にとって画期的な出来事であり、彼らの社会参加を促進し、権利擁護を強化する上で大きな役割を果たしました。ADAは、その後も改正を重ねながら、障害者の権利保障をさらに強化する方向で発展しています。
以下は日本の場合です。
ADA (Americans with Disabilities Act) に直接該当する日本の法律はありません。
しかし、日本の法律においても、障害者差別解消法や障害者基本法など、障害者の権利擁護や社会参加促進を目的とした法律が制定されています。これらの法律は、ADA と同様に、障害者が社会生活を送る上で不当な差別を受けないようにするためのものです。
具体的には、
- 障害者差別解消法: 障害を理由とする不当な差別的取り扱いを禁止し、合理的配慮の提供を義務付ける法律です。
- 障害者基本法: 障害者の権利擁護と社会参加促進に関する基本理念を定め、国や地方公共団体の責務を明確にする法律です。
- 障害者雇用促進法: 障害者の雇用機会の確保と職場環境の整備を促進する法律です。
- 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律 (バリアフリー法): 建築物や公共交通機関のバリアフリー化を促進する法律です。
これらの法律は、ADA と同様に、障害者が社会の中で平等に生活し、活躍できる社会の実現を目指しています。
ADA と日本の法律の違いについては、以下の点を考慮する必要があります。
- 法的拘束力: ADA は連邦法であり、違反した場合には法的制裁が科される可能性がありますが、日本の法律は努力義務規定が多く、法的拘束力が弱い場合があります。
- 対象範囲: ADA は民間企業にも適用されますが、日本の法律は公的機関や一定規模以上の民間企業に限定される場合があります。
- 合理的配慮の範囲: ADA は広範な合理的配慮を要求しますが、日本の法律では、事業主の負担能力などを考慮して合理的配慮の範囲が限定される場合があります。
これらの違いを理解した上で、ADA と日本の法律を比較検討することが重要です。