やはり30前後のこと。
お金を無心するために、2、3ヶ月ごとに教会にやってくる長身の男がいた。乱暴な物言いで、珍しいタイプだった。
2回に一度くらい、少額をあげたと思う。
ある時、いつもに増して脅すような口調でお金を無心するので、「帰れ」とこちらも怒鳴って断った。ところがこの男、帰り際に教会のドアを強く蹴とばして去って行ったのである。ドアは壊れてしまった。
ところが、4年後のこと、私が転任して大阪の教会に赴任したのだが、この男、そこに現れたのである。しかし、私のことを覚えてはいない。
後から、分かったことだが、この男、四国の高知から大阪まで、教会を渡り歩いていたのである。いちいち牧師の顔を覚えておれないほど、たくさんの教会を訪ねていたのだ。